火傷も軽減？プラシーボ効果の驚くべき活用法と実例まとめ

思想・哲学・心理

2025.06.202025.06.25

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たとえば、偽薬を飲んだだけで頭痛や不安が軽減したり、偽の手術でも痛みや機能が回復したりするなど、プラシーボ効果の実例は数多く報告されています。実際には火傷していないにもかかわらず、皮膚に痛みや赤み、水膨れのような反応が現れることもあります。この現象は、視覚や記憶、そして「熱いに違いない」という思い込みによって脳が誤った信号を送り、身体が反応してしまうことで起こります。これはまさに「プラシーボ効果と火傷」の関係を示す典型例であり、科学的な実験でも繰り返し確認されています。

熱したアイロンを見せた直後に冷たいスプーンを皮膚に当てると、多くの被験者が「熱い」と感じてしまうという錯覚が生じます。これは単なる気のせいではなく、自律神経や神経系が実際に作用する生理学的な現象です。さらにこの錯覚は、ノセボ効果と呼ばれる負のプラシーボ反応や、思い込みによる生理反応とも深く結びついています。

この記事では、プラシーボ効果と火傷の科学的メカニズムを中心に、アイロンを使った実験事例、ノセボとの違い、そしてファイテンやヤクルト、レッドブルなどの身近な商品との関係までを具体的に解説します。また、がん治療、車のチューニング、身長の増加といった幅広い応用事例、さらには倫理・法的視点からの考察も含め、プラシーボ効果の奥深さを体系的に掘り下げていきます。

思い込みが火傷のような身体反応を引き起こす仕組み
プラシーボ効果とノセボ効果の違いや影響
火傷実験における脳と神経の関与
医療や商品に応用される心理的効果の具体例

プラシーボ効果と火傷のメカニズムとは
プラシーボ効果と火傷から学ぶ多様な応用

プラシーボ効果と火傷のメカニズムとは

火傷の実験事例
アイロンによる錯覚
ノセボ効果との関係性
思い込みが生む生理反応例
火傷を医療応用する意義
プラシーボ効果の実例

火傷の実験事例

プラシーボ効果と火傷の関係を調べる興味深い実験が、心理学や神経科学の分野で報告されています。ここでは、科学的に確認された具体的な事例を紹介します。

まず、代表的な実験として知られているのが、「冷たいスプーンによる火傷感覚の誘発実験」です。この実験では、被験者に熱いアイロンを目の前で見せ、その直後に目隠しをして冷たいスプーンを腕などに押し当てます。すると、被験者は実際には熱を受けていないにもかかわらず、「熱いものが触れた」と感じ、痛みや灼熱感を訴えることがあります。中には皮膚が赤くなるような生理的反応を示す例もあると報告されています。

このような現象が起こる背景には、人間の脳が視覚や記憶、過去の体験をもとに「これは熱いはず」と判断し、実際の感覚を上書きしてしまう傾向があるからです。脳が信じたことが、体の感覚や反応として現れるという点で、プラシーボ効果の典型的な例といえます。

ただし、この実験には注意点もあります。思い込みが強すぎる場合、精神的なトラウマを残す可能性もゼロではありません。したがって、倫理的な配慮や心理的ケアを十分に行う必要があります。

このように、火傷のような具体的な身体感覚でさえ、思い込みや期待によって引き起こされることがあるのです。プラシーボ効果の影響力は、薬や医療の場面だけにとどまらず、感覚そのものにまで及ぶという点で非常に示唆に富んでいます。

アイロンによる錯覚

プラシーボ効果に関連するユニークな錯覚として、アイロンを用いた実験があります。この実験は、視覚的・感情的な刺激によって、実際の体験をねじ曲げる人間の心理特性を明らかにしています。

具体的には、目の前で加熱されたアイロンが提示されることで、「これから熱いものが当たる」という強い期待が生じます。その後、目隠しをされた状態で冷たいスプーンが肌に触れると、驚くことに多くの被験者が「熱い！」と感じてしまうのです。

これは、視覚や聴覚といった外的な情報に基づいて脳が判断を下し、実際の感覚を作り出してしまうことを示しています。アイロンのように「火傷しそう」と連想されやすい物体を使うことで、錯覚はより強固になります。さらに一部の被験者では、痛みを感じたり、肌が赤くなったりするなどの身体的反応も観察されています。

こうした錯覚は、神経系と心理状態が密接に結びついていることを物語っています。人間の脳は、「これから痛いことが起きる」と思うだけで、神経を活性化させ、痛みの準備を始めるのです。

ただし、この現象を利用する際には注意も必要です。強い恐怖やストレスを与えると、かえって心理的に不安定になったり、逆効果になることも考えられます。誤った方法でこのような効果を再現しようとすることは、倫理的にも問題となる可能性があります。

このように、アイロンという身近な道具を使った錯覚実験は、プラシーボ効果がどれほど私たちの感覚と行動に影響を与えるかを示す、非常に象徴的な事例の一つです。

ノセボ効果との関係性

ノセボ効果は、プラシーボ効果とは逆の方向に働く心理現象です。つまり、無害な刺激や薬に対して「悪影響がある」と思い込むことで、実際に不快な症状や体調の悪化を感じてしまうというものです。

この効果が火傷のような症状とどのように関係するのかを理解するには、思い込みが体に与える影響を知ることが重要です。例えば、「この薬を飲んだら副作用が出るかもしれない」と強く信じてしまうと、実際には無害な薬でも頭痛や吐き気といった不調が生じることがあります。

火傷に関しても同様の現象が観察されています。冷たいスプーンを使った実験では、熱いアイロンを見せられた後にそのスプーンを当てられるだけで、熱傷を負ったかのように痛みや違和感を感じることがあります。これは「火傷するかもしれない」という不安や恐れが、ノセボ的な反応を引き起こしていると考えられます。

ノセボ効果が引き起こす影響は、しばしば自律神経やストレスホルモンに関連しています。そのため、実際の物理的ダメージがなくても、脈拍の上昇や血圧の変化といった身体的反応が現れることがあります。

ただし、この現象は非常に繊細で、医療現場では扱い方に注意が求められます。医師や治療者が不用意にネガティブな情報を与えてしまうと、逆に患者の症状を悪化させてしまう可能性があるからです。

このように、ノセボ効果はプラシーボ効果と同じく心理状態から発生するものですが、結果として身体に悪影響をもたらす点で大きな違いがあります。

思い込みが生む生理反応例

人の思い込みが、実際の体の反応にまで影響を及ぼすことがあります。これは心理学的にも医学的にも注目されている現象で、非現実的な刺激であっても、脳がそれを「本当だ」と信じ込むことで身体が反応してしまうのです。

代表的な例として、冷たい火箸に触れただけで火傷のような症状が出るケースがあります。特に、過去に火傷をした経験がある人や、小さな子どもにおいてこの傾向は強く見られます。視覚や音、匂いなどから過去の恐怖を思い出し、「また火傷するかもしれない」と考えることで、身体が緊張状態になり、水膨れのような皮膚反応が起こることもあるのです。

この反応には、自律神経の働きが深く関係しています。恐怖やストレスが高まると交感神経が活性化され、血管が収縮し、発汗や皮膚の異常感覚が出やすくなります。これが痛みやかゆみとして現れる場合もあります。

思い込みによる反応は、必ずしも病的なものとは限りません。例えば、医師や治療者に対する強い信頼感があると、何もしていないのに痛みが軽く感じられることがあります。逆に、「これは効かない」「悪化するかもしれない」と思うことで、実際に症状が悪化することもあります。

このように、心理的な期待や恐れが体にリアルな変化をもたらす現象は、単なる気のせいではなく、科学的にも裏付けられているものです。人間の体と心は密接につながっているため、思い込みが身体の状態を左右することは十分にあり得るのです。

火傷を医療応用する意義

プラシーボ効果と火傷の関係を医療の現場で応用することには、いくつかの重要な意味があります。特に、痛みの緩和や不安の軽減において、この心理的現象が患者の回復に貢献する可能性があるためです。

まず注目すべきは、患者が「治る」と信じることによって、実際に体調が改善するケースがあるという点です。例えば、火傷のような強い痛みを抱える患者に対して、信頼感を高める言葉かけや「これは痛みを和らげる処置です」といった前向きな説明を行うことで、実際に痛みが軽くなることがあります。この現象は、痛みの知覚が心理的な要素に大きく左右されることを示しています。

さらに、火傷治療においては、患者のストレス管理も重要な課題です。プラシーボ効果をうまく活用することで、患者が処置に対して前向きな気持ちを持ち、回復を早めることにつながる可能性があります。これは、医師と患者の信頼関係がしっかりしていればしているほど、効果が高まる傾向にあります。

ただし、この効果を応用するには注意も必要です。プラシーボはあくまでも「偽の治療」であるため、患者に誤解を与えないように配慮しなければなりません。また、期待が裏切られた場合に逆効果（ノセボ効果）になるリスクもあるため、使い方を誤ると逆に不安や痛みを増幅させてしまうおそれがあります。

こうした点をふまえれば、プラシーボ効果を医療的に応用する際には、必ず科学的な治療と併用し、心理的な補助的手段として位置づけることが望ましいといえるでしょう。精神的な支えとしての役割を果たすプラシーボ効果は、火傷治療をはじめとした痛みのケアにおいて、補完的かつ実践的な方法の一つとして活用できる可能性を持っています。

プラシーボ効果の実例

以下、プラシーボ（偽薬）効果の実例をジャンル別に多数ご紹介します。信念・期待や儀式的な要素がどれほど身体や感情に影響を与えるか、事例を通して見ていきましょう。

臨床試験・医療分野

変形性膝関節症のニセ手術
1999年に NEJM に掲載されたランダム化比較試験で、患者に皮膚を切開して「関節内を洗浄した」と偽りながら実質的な処置を行わなかったにも関わらず、プラセボ群でも実際の手術と同等またはそれ以上の痛み改善があり、2年後まで効果が持続しました。
片頭痛や慢性腰痛に対するオープンラベル・プラセボ
自分がプラセボ（効果のない薬）を服用していると知りつつ続けた患者でも、痛みや機能の改善が認められ、プラセボ信頼モデルの可能性を示しました。
IBS（過敏性腸症候群）患者の例
IBS 患者に「ニセの薬」を処方し、患者が認識しているにも関わらず症状が緩和。プラセボでも医療儀礼が効果を引き起こす可能性が示されました。time.com
パーキンソン病・うつ・疲労など多様な症状改善
プラセボがパーキンソン病やうつ、不安、疲労、アレルギー症状などの軽減に寄与した事例が多数報告されています。medicine.umich.edu
難治性疾患の薬効過大評価の是正
小規模な開放試験で有効かと思われた治療（例えばリチウムやミノサイクリン）が、プラセボ対照の二重盲検試験では「実際には無効」であることが明らかになった例です。massgeneral.org

心理・自己評価領域

掃除など日常作業が「運動」との錯覚→健康改善
「ホテルの清掃係の作業は運動に相当する」と告げたグループでは、実際運動をしていなくても、血圧・体重・BMI の有意な低下が見られました。
高価格・ブランド化製品 vs タップ水
数ドルの「高級」水として提供されたのは実はホースの水でしたが、消費者は味に満足・清涼感を強く感じるなど、高価格＋ブランド効果によるプラセボ効果が発動しました。listverse.com
美容・化粧品領域の“価格錯誤”プラセボ
高級パッケージや高額な価格が「効果あり」と感じさせ、実際に肌触りや満足度を高める例も。期待が性能評価に影響します。

オフィス・社会的システム内の“偽機能”

プラセボボタン（ダミーボタン）
温度変化しないオフィスのサーモスタットや交差点の歩行ボタン（NYC や UK など）でも、押す儀式により「制御感」を得られることで満足感が生まれます。

哲学・歴史的エピソード

「パン・ピル（水粉薬）」の活用
トーマス・ジェファーソンが引用した医師は、治療に「パン・ピル」（小麦粉の薬）や「色付き水」を多用し、1800年代に効果をあげていたと記録されています。time.com
抗うつ薬（Paxil） vs プラセボ
10代のうつ病を対象とした Study 329 において、主要評価ではパキシル（抗うつ薬）はプラセボより優れた効果を示さず、プラセボの影響が大きかった例です。en.wikipedia.org

現代研究・神経科学の進展

開示プラセボ（オープンラベル）研究の台頭
自分が“ただの偽薬”だと分かっていても効果を得るという研究は、2025年春の報道でも広く取り上げられました。
脳内神経伝達物質への影響
MRI やPETによる神経生理学的研究では、プラセボ服薬でエンドルフィンやドーパミン分泌が促進されることが示唆されています。

プラシーボ効果と火傷から学ぶ多様な応用

バーナム効果とプラシーボ効果の違いとは
類似する心理現象一覧
リラクゼーショングッズやアクセサリーなど商品応用
車のチューニング例
がん治療への影響
ヤクルトなど食品事例
レッドブルのマーケティング効果
殺人・倫理と法的視点
身長—限界を超える幻想？

バーナム効果とプラシーボ効果の違いとは

バーナム効果とプラシーボ効果は、どちらも心理学の分野で知られる現象ですが、その仕組みや働く場面には明確な違いがあります。混同されがちなこの2つを正しく理解することは、日常や医療の中での判断にも役立ちます。

バーナム効果とは、誰にでも当てはまるような曖昧で一般的な説明を、自分にだけ特別に当てはまると感じてしまう心理的傾向のことです。たとえば、「あなたは時に内向的ですが、人と打ち解けるのも得意です」といった言葉は、実は多くの人に当てはまります。しかし、それを個人的に「自分の性格を見抜かれている」と信じてしまうのがバーナム効果です。主に占いや性格診断などで見られる傾向です。

一方、プラシーボ効果は、医療や治療の場面で用いられることが多く、偽の薬や治療でも「効果がある」と信じることで実際に症状が改善される現象を指します。つまり、実際の薬効はないにもかかわらず、期待や信念が身体にポジティブな変化をもたらすのです。

この2つの違いは、「結果に変化があるかどうか」にあります。バーナム効果は心理的な納得感や自己認識の錯覚をもたらすだけで、身体的な影響はほとんどありません。一方、プラシーボ効果では、心理的な期待が実際の痛み軽減や症状の改善につながるケースがあります。

いずれにしても、人の思い込みや信念が行動や感じ方に与える影響は非常に大きく、この違いを理解することが心理現象の仕組みを知るうえでの大きな一歩となります。

類似する心理現象一覧

プラシーボ効果のように、人の思い込みや期待が行動や体調に影響を与える心理現象は、他にもいくつか存在します。ここでは、特に関連性の高い代表的な例を紹介します。

まず「ノセボ効果」が挙げられます。これはプラシーボ効果の反対で、「悪い結果が起きる」と信じることで実際に体調が悪化する現象です。たとえば、無害な薬を「副作用があるかもしれない」と思って服用した結果、頭痛や吐き気を感じるようになるケースがこれに該当します。

次に「ホーソン効果」があります。これは、他人に注目されていると感じることで、行動や成果が変化するという現象です。実験環境や職場などで「見られている」と意識することで、生産性が上がることがあります。これは、期待に応えようとする心理が働くためです。

また、「ピグマリオン効果」も似た現象です。これは、他人からの期待がその人のパフォーマンスに影響を与えるというものです。たとえば、教師がある生徒に「きっとできる」と期待して接すると、その生徒の成績が実際に伸びることがあります。

さらに「ハロー効果」も見逃せません。これは、ある一つの良い（または悪い）印象が、他の評価にも影響を与えてしまう現象です。たとえば、外見が良い人が「仕事もできそう」と評価されることがあるのはこの効果の表れです。

これらの現象はいずれも、事実や現実以上に「どう認識されるか」「どう信じられているか」によって結果が変わる点で共通しています。プラシーボ効果を理解するうえで、これらの関連する心理現象も併せて知っておくことは非常に有益です。

リラクゼーショングッズやアクセサリーなど商品応用

健康関連の商品において、プラシーボ効果はしばしば効果の実感に影響を与える要素として見られます。その代表的な例がリラクゼーショングッズやアクセサリーの分野です。

筋肉の緊張緩和や血流の改善、ストレス軽減などを謳った製品が多く販売されています。こうした商品は、特殊な金属処理やテクノロジーを売りにしていますが、科学的な効果のエビデンスが十分でないという指摘もあります。

それでもなお、多くのユーザーが「肩が軽くなった」「疲れにくくなった」といった効果を感じるのは、プラシーボ効果が関与している可能性があります。「これは効く」と信じて使うことで、実際に体の感覚が変化することは珍しくありません。

このような商品応用のメリットは、副作用がなく、心理的な安心感を得られる点です。一方で、過度な期待を抱くと、本来の健康管理がおろそかになるリスクもあります。特に慢性的な痛みや疾患を抱える人にとっては、科学的な治療と併用することが重要です。

つまり、このような商品は、プラシーボ効果をうまく活用しながら、ユーザーのコンディション管理をサポートする「補助的アイテム」として捉えるのが現実的でしょう。自分の感覚と向き合いながら活用することで、心身のバランスを整える手助けになります。

車のチューニング例

車のチューニングにおいても、プラシーボ効果は意外なほど影響を及ぼします。特に、性能の変化が数値で表しにくいパーツやカスタムにおいては、「変わった気がする」と感じる心理が結果に強く影響していることがあります。

たとえば、「軽量チタンボルト」や「高性能ヒューズ」などは、実際の性能差がごくわずかであっても、交換後に「加速が良くなった」「ハンドリングが安定した」と感じるドライバーが少なくありません。このような感覚は、期待感と満足感から生まれるプラシーボ効果の典型です。

また、エンジンルームに貼る「アルミテープ」や「帯電防止グッズ」なども、科学的には効果の根拠が不十分とされていますが、一部の車愛好家にとっては「体感できる変化があった」との声があります。これも、心理的な影響によって運転中の集中力や姿勢が変わり、結果的に「運転しやすくなった」と思える場合があるのです。

ただし、このようなカスタムがもたらす効果は個人差が大きく、科学的検証を通じて明確に説明できるものではありません。だからこそ、自分にとってどのような変化があったのかを冷静に観察し、必要以上に高額なパーツに依存しない姿勢が求められます。

このように、車のチューニングにもプラシーボ効果は存在し、満足感や楽しさを高める一因となっています。整備や改造そのものが自己満足である側面もあるため、「感じ方を楽しむ」という視点で付き合うことが大切です。

がん治療への影響

がん治療の現場では、プラシーボ効果が患者の体調や心の状態に影響を与えることがあるとされています。特に副作用の軽減や倦怠感の緩和など、治療と並行して現れる身体の不調に対して、この心理的な効果が一定の役割を果たす場面があるのです。

たとえば、過去に使用されたクレビオゼンという物質の臨床試験では、薬効が明確でなかったにもかかわらず、患者の中には腫瘍の縮小や症状の改善を経験した人がいました。これは、治療に対する期待や希望が症状の感知や身体反応に作用した結果だと考えられます。

また、近年の研究では、患者が「これは効果がある」と認識したプラセボを服用した場合、実際にがんに伴う疲労感が軽減されたという報告もあります。さらに興味深いのは、プラセボであると知らされていても一定の改善が見られた点です。これは、身体と心理のつながりがそれほど強いことを意味しています。

一方で、がん治療でプラシーボ効果を活用することには慎重な対応が求められます。倫理的な観点から、偽薬を使う際には患者の同意や十分な説明が必要となりますし、治療の代替として用いることは推奨されません。

つまり、プラシーボ効果は、がん治療の中で補助的な役割を果たしうる存在です。特に痛みや副作用のコントロールにおいて、患者のメンタルケアや信頼関係とともに活用することで、治療の満足度や質を高める一助となる可能性があります。

ヤクルトなど食品事例

健康食品や機能性飲料の分野でも、プラシーボ効果は大きな関心を集めています。ヤクルト1000のように「睡眠の質が上がる」「ストレスが軽減される」といった効果をうたう商品では、利用者の期待感が実際の体調や気分に影響を与えることがあります。

たとえば、医学部生を対象とした研究では、ヤクルト1000を飲んだグループと、乳酸菌を含まないプラセボ飲料を飲んだグループの両方に、一定の睡眠改善効果が見られたという報告があります。この結果から、商品そのものの成分による効果に加え、「効くはずだ」という気持ちがコンディションに影響を及ぼしたと考えられます。

さらに、ヤクルトに限らず、栄養ドリンクやサプリメント、機能性表示食品の中には、実際の成分効果よりも使用者の心理的期待によってポジティブな変化を感じるケースが珍しくありません。このような反応は、プラシーボ効果がいかに日常生活に溶け込んでいるかを示しています。

ただし、プラシーボによる効果は個人差が大きく、すべての人に同じ結果をもたらすわけではありません。また、健康食品を過信しすぎることで、医師の指導やバランスの取れた生活習慣がおろそかになるリスクもあります。

このように、ヤクルトなどの食品がもたらす実感には、プラシーボ効果が一定程度関与している可能性があります。効果をより良く感じるには、商品の成分だけでなく、日々の生活全体を整えることが大切です。

レッドブルのマーケティング効果

レッドブルの成功には、プラシーボ効果を巧みに利用したマーケティング戦略が深く関わっています。単なるエナジードリンクにとどまらず、「飲めば元気になる」「集中力が高まる」といった期待を自然と植え付ける工夫が随所に見られます。

まず、「レッドブル、翼をさずける」というキャッチフレーズは、その象徴的な例です。この言葉は、単に商品を紹介するだけでなく、飲んだ後に活力が得られるというイメージを強く印象づけています。こうしたメッセージに触れることで、消費者は実際に効果を感じるようになることがあります。これがプラシーボ効果による体感です。

さらに、スポーツイベントや若者文化との積極的なコラボレーションも、期待感の形成に貢献しています。エクストリームスポーツの場面でレッドブルが登場することで、「パフォーマンス向上に役立つ飲み物」という印象が強まり、それを信じて飲むことで実際に体の調子が良くなったように感じるケースも少なくありません。

ただし、こうした効果は成分に基づくものとは限らず、実際の持続的なパフォーマンス改善を示す科学的な裏付けは限定的です。つまり、感じる変化の多くが、ブランドへの信頼や自己暗示によって引き起こされている可能性があります。

このように、レッドブルは商品の性能だけでなく、消費者の心理に働きかける戦略を活用することで、他のエナジードリンクとの差別化を図っています。飲み手が「効く」と信じることが、そのまま体験としての効果につながっているのです。

殺人・倫理と法的視点

プラシーボ効果の裏側には、「ノセボ効果」と呼ばれる負の影響も存在します。これが悪用された場合、倫理や法律の観点から極めて重大な問題になります。特に、思い込みによって人に害を及ぼした場合、それはどこまで責任を問えるのかという議論があります。

たとえば、過去に報告された極端なケースでは、無害な行為であっても「死ぬ薬を飲んだ」と信じ込ませることで、実際に身体機能が低下し、最悪の場合に死に至る事例もあります。これは、ノセボ効果が極端に作用したケースと考えられています。本人の思い込みが強ければ、脳が身体の制御を変化させてしまうことすらあるのです。

しかし、このような結果が人為的に引き起こされた場合、倫理的な問題だけでなく法的責任も問われる可能性があります。もし加害者に「死ぬと思わせよう」という意図があれば、それは未必の故意による殺人や傷害致死と見なされる可能性も出てきます。たとえ物理的な力を加えていなくても、心理的な誘導が死因となった場合、重大な犯罪とみなされる余地があるのです。

また、こうした行為は医学や心理学の悪用とも捉えられ、研究倫理に反する非人道的な行為ともされます。過去には、囚人を用いた倫理違反の実験も報告されており、それが原因で命を落としたとされる例も記録に残っています。

このように、プラシーボやノセボといった心理的作用には、医学的な利用価値だけでなく、悪用のリスクがあることも理解しなければなりません。特に他者の生命や安全に影響するような使い方は、法的にも重く問われる可能性があるという認識が必要です。

身長—限界を超える幻想？

プラシーボ効果が身長の伸びにまで影響するのかという問いは、多くの人にとって興味深いテーマです。特に、成長期の子どもや思春期の若者にとって、「信じれば伸びるかも」という期待感が現実に影響を与える可能性があるのかは、気になるところでしょう。

結論から言えば、現在の科学では、プラシーボ効果が直接的に身長を伸ばすことを証明した信頼できるデータは存在していません。身長の伸びには、主に遺伝的要素、栄養状態、ホルモン（特に成長ホルモン）の分泌量など、生物学的な条件が関与しています。つまり、「信じる力」だけでは、骨の成長そのものを変えることは難しいと考えられています。

ただし、間接的な影響という観点では、プラシーボ効果が無関係とは言い切れません。例えば、「このサプリメントを飲めば身長が伸びる」と信じたことにより、生活習慣を整える意識が高まり、結果として睡眠や栄養バランスが改善されることがあります。こうした環境の変化が、最終的に成長にプラスの影響をもたらす可能性はあります。

一方で、注意も必要です。過度な期待を抱いて高額なサプリメントに依存したり、効果のない商品に投資しすぎたりするのは望ましくありません。特に、科学的根拠が不十分な成長促進商品には注意が必要です。誤った情報に惑わされないためにも、信頼できる医療機関や栄養士のアドバイスを受けることが重要です。

このように、「思い込みで身長が伸びる」というのはあくまで幻想に近い考え方です。ただし、ポジティブな思考が健康習慣の維持につながる面もあるため、心の持ちようが間接的に良い結果をもたらす可能性はゼロではありません。プラシーボ効果に期待するなら、あくまで補助的な考え方として受け止めることが現実的です。