唯識思想は、「すべての現象は心の働きから生じる」という仏教哲学の重要な考え方です。この記事では、唯識思想の基本をわかりやすく解説し、誰が説いたのか、その特徴や空の思想との違いにも触れます。また、浄土真宗との関係や現代における唯識の意味についても詳しく説明。難しい仏教用語も丁寧に解説しているので、初めて学ぶ方でも理解しやすい内容となっています。唯識思想を通じて仏教の深い世界を探りましょう。
- 唯識思想の基本的な考え方とその特徴
- 唯識思想を説いた人物とその歴史的背景
- 空の思想との違いなど、唯識思想の他の仏教思想との関係
- 唯識論や関連書籍を通じた具体的な理解方法
初心者向けに唯識思想をわかりやすく解説
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- 誰が説いたのかを詳しく解説
- 唯識思想の特徴とは?心の働きと仏教哲学をわかりやすく解説
- 仏教における唯識とは?心の本質を探る唯識思想をわかりやすく解説
- 空の思想と唯識思想の違いは何ですか?心と現実の捉え方をわかりやすく解説
誰が説いたのかを詳しく解説
唯識思想は、インドの仏教哲学者 無著(むじゃく)とその弟である世親(せしん)によって確立されました。彼らは、唯識(ゆいしき)という思想を大乗仏教の中で発展させ、多くの経典や論文を著して広めました。
無著は、仏教の教えを探究し、心の本質を中心に考える唯識の理論を体系化しましたが、特に弟の世親がその教義をさらに詳細に説明し、唯識の理解を深めたのです。世親は「唯識三十頌(ゆいしきさんじゅうじゅ)」という詩を作り、その中で唯識の要点を簡潔にまとめました。
この三十頌は、唯識の思想を学ぶための基本的な教典として、仏教哲学の中でも重要視されています。無著と世親の教えは、のちに中国や日本に伝わり、現代に至るまで唯識思想の基盤となっているのです。
以下に、唯識思想を説いた代表的な人物を紹介します。
1. 無著(むじゃく)
唯識思想を初めて体系化した人物で、最も重要な唯識の経典である『唯識三十頌』を著しました。無著は、仏教の中で心の作用を重視し、すべての現象は心の働きによるものであるという唯識の基本的な考えをまとめました。
2. 世親(せしん)
無著の弟で、唯識思想の発展に貢献した人物です。彼は『唯識二十論』を著し、唯識思想を理論的にさらに深化させました。彼の著作は唯識の具体的な理解に役立ち、実践的な応用についても述べられています。
3. 陳那(じんな)
陳那は、唯識学派を後世に伝え、論理的かつ哲学的に唯識を発展させた人物です。彼は論理学と仏教を結びつけ、唯識思想をインド仏教全体の枠組みで捉えることに貢献しました。
4. 玄奘(げんじょう)
中国の僧であり、インドで唯識を学び、帰国後に唯識思想を中国に伝えた人物です。玄奘は、唯識の経典を多数漢訳し、中国や日本の仏教に大きな影響を与えました。彼の翻訳は、東アジアの唯識思想の基盤となっています。
これらの人物によって唯識思想は広まり、仏教の中で重要な位置を占めるようになりました。無著や世親の教えを理解することで、唯識思想の基本的な考え方を深く学ぶことができます。
唯識思想の特徴とは?心の働きと仏教哲学をわかりやすく解説
唯識思想の最大の特徴は、「すべての現象は心の働きによって生じている」という考え方です。唯識とは文字通り「心のみ」を意味し、外界の存在や現象は独立して存在するのではなく、私たちの心がそれらを認識することで初めて意味を持つという視点が基本にあります。
つまり、世界は私たちの心の投影であり、心がなければ物事は存在しないという思想です。
また、唯識思想は「八識説(はちしきせつ)」という独特な心の構造を提唱しています。これは、人間の心が8つの識(しき)に分かれて働いているとする説です。特に、最後の「阿頼耶識(あらいやしき)」は、すべての経験や行為の種子(しゅうじ)が蓄積され、次の生に影響を与えると考えられています。
以下に、八識を簡単に説明します。
- 第1識(眼識): 目で見ることによる認識。視覚に関する情報を処理します。
- 第2識(耳識): 耳で聞くことによる認識。聴覚に関する情報を処理します。
- 第3識(鼻識): 鼻で嗅ぐことによる認識。嗅覚に関する情報を処理します。
- 第4識(舌識): 舌で味わうことによる認識。味覚に関する情報を処理します。
- 第5識(身識): 皮膚で感じることによる認識。触覚に関する情報を処理します。
- 第6識(意識): 上記の五感から得た情報を総合的に理解し、判断する認識。
- 第7識(末那識): 自我意識を司る識。自分自身の存在を認識する働きです。
- 第8識(阿頼耶識): 潜在意識ともいわれ、過去の経験や業(カルマ)を蓄える識。これが無意識の根本的な働きを担っています。
このような複雑な心の働きを解き明かし、現実をどのように認識しているのかを探るのが唯識思想の特徴であり、他の仏教思想との大きな違いです。この視点により、私たちが体験する苦しみや迷いも心の働きによるものであるとされ、これを理解することで解脱(げだつ)に至ることができると考えられています。
唯識思想は、仏教哲学の中でも特に心の働きに焦点を当てた思想です。すべての現象は心の中で作り出されたものであるという観点から、物質的な現実は実在しないと説いています。
ここでは、唯識思想の主要な特徴をわかりやすく説明します。
1. 「万法唯識」:すべては心の表現
唯識思想の根本的な考えは、「万法唯識」、すなわち「すべての現象は心の働きによって現れるもの」という教えです。物理的な世界や存在は、心によって認識されるものであり、外界に独立した実在はないとされます。これにより、物質の存在自体が否定され、すべてが心の投影であると考えられます。
2. 阿頼耶識(あらいやしき)の概念
唯識思想において、心の根源的な働きとして阿頼耶識(あらいやしき)が重要な役割を果たします。阿頼耶識は、すべての経験や記憶が蓄積される場所であり、現実を構成する基盤です。この心の深層には過去の行いの結果が蓄えられ、それが後の現象として現れると考えられています。
3. 外界の否定
唯識思想では、外部の世界は心の中に映し出される幻影に過ぎないとされます。この考えは、私たちが知覚するものすべてが心によって作り出されたイメージであり、物質的な存在そのものは実在しないと強調しています。
4. 三性説(さんしょうせつ)
唯識思想は、三つの異なる真実のレベルを教える「三性説」を掲げます。
- 遍計所執性(へんけいしょしゅうしょう):心によって作り上げられた虚構の認識。
- 依他起性(えたきしょう):心の因果関係から生まれる認識。
- 円成実性(えんじょうじつしょう):完全に目覚めた認識、つまり真実そのもの。
これらの特徴により、唯識思想は私たちが知覚する現実が心によるものであり、真実の姿は目覚めた意識によってのみ捉えられるという教えを展開しています。
仏教における唯識とは?心の本質を探る唯識思想をわかりやすく解説
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唯識の「唯」という字が意味する通り、仏教においては、外の世界や物質的な現象よりも、心そのものがすべての根本であるという教えが強調されます。この思想を理解することによって、私たちは自分自身の内面を見つめ直し、心のあり方を変えることで、苦しみや迷いから解放される道が示されているのです。
具体的には、以下のような要点があります。
1. 現象のすべては心の働き
唯識思想では、私たちが目に見えるものや感じるものは、実際に存在しているわけではなく、心によって作り出されたものであるとされます。つまり、世界の本質は外部にあるのではなく、内面的な心の中にあるという考えです。
2. 阿頼耶識の重要性
仏教における唯識思想は、阿頼耶識(あらいやしき)という無意識的な領域に着目します。この阿頼耶識は、すべての過去の行いや経験が蓄積される場所であり、新たな現象を生み出す源となります。これにより、私たちの現実は心の記憶や過去の行動に基づいて変化すると説かれています。
3. 認識と現実のずれ
唯識思想によると、私たちが知覚している現実と、実際の現実には大きな差があります。外部の世界は本質的には心の影響によって歪められており、正しく見えていないことが多いのです。この考えに基づき、悟りによって初めて真の現実が理解できるとされています。
4. 実践的な側面
唯識思想は、自己の心を浄化し、正しい認識を得ることが重要だと説いています。仏教においては、心の働きに対する理解が重要であり、これを通じて迷いや執着から解放されることが最終目標とされています。
以上の特徴から、仏教における唯識は、心を中心に現実を捉え、真の理解に到達するための思想であると言えます。この教えは、私たちの認識と心の働きを深く理解するための道しるべとなっています。
空の思想と唯識思想の違いは何ですか?心と現実の捉え方をわかりやすく解説
空(くう)の思想と唯識思想の違いは、物事の存在の捉え方にあります。空の思想は、「すべてのものは実体を持たず、変化し続ける存在である」という考えを中心に据えています。つまり、私たちが見ている世界や自分自身を含めて、あらゆるものは固定的な本質を持たず、相互に依存して成り立っているため、永遠に変わらないものは存在しないとされています。
一方、唯識思想は「すべての現象は心の働きによってのみ存在している」と考えます。つまり、唯識思想では、私たちが見ている外の世界や物事の存在は、心がそれを認識するからこそ成り立つという主張がなされます。
この点で、空の思想が「存在の本質は空である」とするのに対し、唯識思想は「その空でさえも心の働きによって現れる」と強調する点が大きな違いです。
もう一つの違いは、心の役割の捉え方にあります。空の思想では、すべてが空であるために、心そのものにも固定された実体はないとされていますが、唯識思想では、心が主役として重要視され、あらゆる現象の背後に心の働きがあると考えます。
仏教における空の思想と唯識思想は、どちらも現象の本質に対する深い考察を示していますが、それぞれに異なる視点があります。
両者の違いを理解することで、仏教思想全体に対する理解が深まります。
1. 空の思想:すべての存在は本質的に無
空の思想は、すべての現象は本質的に独立した存在を持たないという考えに基づいています。つまり、物質や現象には固定された実体はなく、あらゆるものが相互依存によって成り立っています。このため、すべての存在は「無」だとされ、物事に執着することは無意味であると説かれています。
2. 唯識思想:すべては心の働き
一方で、唯識思想は、外部の世界や現象はすべて心の働きによって作られるという考えに基づいています。唯識では、外の物質世界は実体を持たず、心がそれを認識し構築しているという視点です。つまり、私たちが見る世界は、心によって作られた虚像に過ぎないとされます。
3. 現象の捉え方の違い
空の思想では、現象そのものが「無」であるため、それに執着しないことが強調されます。一方、唯識思想では、心が現象を作り出していることに焦点が置かれ、心の認識が現実を左右するという考えです。したがって、空の思想は物の存在自体を否定し、唯識思想はその存在が心の働きに依存していると考えます。
4. 修行のアプローチ
空の思想に基づく修行は、物事への執着を捨てることが重要視されます。これは、固定された実体がないことを理解し、物質や感情に縛られない状態を目指すものです。対して、唯識思想に基づく修行では、心の浄化と正しい認識を目指します。心が現実を作り出しているため、心を浄化し正しい視点を持つことが最終目標となります。
5. 結論
両者の違いを簡単にまとめると、空の思想は「すべては無」であるという世界観に基づき、唯識思想は「すべては心による」と考える世界観に基づいている点が最大の違いです。どちらも仏教の深い哲学的な教えですが、それぞれの焦点やアプローチが異なります。
- 空の思想
- すべての存在は本質的に無
- 現象は独立した実体を持たない
- 執着を捨てることが重要
- 唯識思想
- すべての現象は心の働きによって生じる
- 外部の世界は心による構築物
- 心の浄化と正しい認識が重要
このように、空の思想と唯識思想は、それぞれ異なる角度から現象や世界の本質を捉えていることが分かります。
唯識思想をわかりやすくまとめる:仏教哲学の核心を解説
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- どういう意味?仏教哲学「唯識思想」の核心をわかりやすく解説
- 唯識思想と浄土真宗の関連性とは?その共通点と違いをわかりやすく解説
- 唯識問題とは?仏教哲学における課題とその解釈を解説
- おすすめの書籍|初心者から深く学びたい人向けの必読書
どういう意味?仏教哲学「唯識思想」の核心をわかりやすく解説
唯識論とは、仏教における「唯識思想」の理論的な枠組みを解説した教えのことを指します。この理論は、主に「私たちが認識する世界や物事はすべて心によって作り出される」という唯識思想に基づいています。
唯識論では、私たちが普段感じ取っている外の世界や物質的なものは、実体があるわけではなく、心の作用によって生じる「表象」に過ぎないと説かれます。唯識論の中では、「八識」と呼ばれる心の八つの働きが説明され、特に「阿頼耶識(あらいやしき)」という深層の意識が、私たちの心の根本にあるとされます。
この阿頼耶識には、過去の行為や思考の影響が蓄積され、それが原因となって新たな現象を生み出します。このため、唯識論は、私たちがどのように世界を認識し、苦しみや迷いを生み出しているかについての深い洞察を提供しています。さらに、唯識論は実践的な面も持ち、心の働きを理解し、それに対処することで、迷いや苦しみから解放される道が説かれています。
このように唯識論は、心の本質を探求し、仏教の解脱への道を示す重要な教義の一つです。
1. 唯識論の基本的な考え方
外部の世界や物質的な存在は、私たちの心が認識しているだけで、それ自体の独立した存在はないとされます。つまり、現実として私たちが感じたり、見たりするものは、心が作り出した幻影に過ぎないと考えるのです。唯識論では、これを**「万法唯識」**と呼び、すべての現象は心の働きによるものだとしています。
2. 「識」とは何か?
唯識論で言う「識」とは、人間の認識作用や意識を指します。私たちが外部の世界をどのように知覚し、理解するかというプロセスが「識」です。この「識」が実際の世界を作り出し、感じさせるので、外の世界はすべて心の中で起こっていると考えます。
3. 唯識論の目的
心の働きを深く理解することを通じて、私たちが抱く誤った認識や執着から解放されることを目指しています。私たちが見ている世界が心の産物であることを理解すれば、苦しみや悩みの原因もまた心の中にあると気づけるため、正しい認識によって解脱に至る道が開かれるとされます。
4. 代表的なテキスト
唯識論に関連する代表的な経典やテキストとして、以下のものが挙げられます。
- 『成唯識論』
- 唐代の学者、玄奘が翻訳した唯識思想の中心的なテキスト
- 『大乗阿毘達磨経』
- 唯識思想を体系化した大乗仏教の教典
- 『瑜伽師地論』
- 唯識思想の基礎をなす論書で、心の働きについて詳述されている
このように、唯識論は仏教の中でも深い哲学的な教えを含んでおり、心と世界の関係を考察する重要な理論です。
唯識思想と浄土真宗の関連性とは?その共通点と違いをわかりやすく解説
唯識思想と浄土真宗の関連性は、どちらも仏教思想に基づいているものの、基本的な教義やアプローチには違いがあります。
まず、唯識思想は「すべての現象は心によって生じる」という心の働きに焦点を当てています。
これに対して、浄土真宗は阿弥陀仏の力を信じてその救いを得るという、「他力本願」を中心とした教えです。浄土真宗では、自力で悟りを得ることが難しいという認識のもと、阿弥陀仏の本願に頼ることで浄土に往生することを目指します。唯識思想が心の探求とその制御に力を入れるのに対し、浄土真宗は阿弥陀仏の慈悲に全面的に依存するという違いがあるのです。
しかし、一方で共通点もあります。どちらも人々が持つ煩悩や迷いから解脱するための道を説いており、最終的には心の浄化を目指しているという点では共通しています。
このため、唯識思想を理解することが、浄土真宗の信仰を深める上でも役立つと考えることもできますが、教義の中心となる考え方は異なるため、それぞれを区別して学ぶことが大切です。
1. 唯識思想の核心と浄土真宗の教え
唯識は、「すべての現象は心によって作られる」という考えに基づいており、外部の世界や物質は心の作用に過ぎないと説きます。一方、浄土真宗は、阿弥陀仏への信仰によって浄土に往生し、救済を得ることを強調しています。唯識が心の働きに焦点を当てているのに対し、浄土真宗は他力本願による救済を説いています。
2. 共通点と関連性
両者には、「執着から解放される」という共通した目標があります。唯識は、私たちが心の誤った認識によって生じる執着や苦しみを乗り越えることを目指します。一方、浄土真宗も、煩悩や執着から解放されるためには、阿弥陀仏の慈悲にすがることが重要だと説きます。両者ともに、最終的な解放のプロセスに心の浄化や意識の変化が関わっている点では関連しています。
3. 教えの違い
- 唯識思想
- 唯識は主に心の構造とその働きを解明し、自己の認識を改善することで解脱を目指します。
- 浄土真宗
- 浄土真宗は、阿弥陀仏の力を信じて他力による救済を強調します。修行や自己の努力ではなく、信仰による救いを重視しています。
4. 結論
浄土真宗と唯識は異なる方向性を持っていますが、共に心の状態や認識の変化を通じて救いを目指している点では関連が見られます。また、仏教全体としての共通する理念、例えば執着からの解放、心の変容、悟りへの道などにおいて、両者は互いに補完し合う可能性があります。
- 唯識の核心
- すべては心の作用として現れる
- 浄土真宗の教え
- 阿弥陀仏への信仰による救済
- 共通点
- 執着からの解放を目指す
- 相違点
- 唯識は心の構造を解明、浄土真宗は信仰による救いを強調
唯識思想と浄土真宗の関連性を理解することで、仏教全体の多様性とそれぞれの教えが持つ深い意味をよりよく知ることができます。
唯識問題とは?仏教哲学における課題とその解釈を解説
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唯識問題とは、「心がすべての現象を作り出している」とする唯識思想に基づく哲学的な課題や疑問点を指します。この問題は、私たちがどのようにして外界を認識しているのか、あるいは外の世界が本当に存在しているのか、といった認識論の根本的な問いに繋がります。具体的には、唯識思想は「私たちが見たり感じたりする世界は、すべて心の作用であり、実体は存在しない」と主張していますが、この考え方が現実の世界とどのように結びつくのかという点が問題とされます。
もし心がすべてを作り出しているのだとすれば、外の世界はどこまで実在しているのかという疑問が生まれます。
また、唯識問題は仏教だけでなく、哲学や心理学の分野でも関心が高いテーマです。たとえば、現代の認知科学や意識の研究においても、私たちの意識が現実をどう形成しているのかが議論されています。
このように、唯識問題は単なる仏教の教えにとどまらず、人間の認識や存在に関わる普遍的な問題として広く議論されているテーマです。
ここでは、代表的な唯識問題をいくつか紹介します。
1. 心外無物の問題
唯識思想は「心外無物」、すなわち心以外には何も実在しないと主張します。この考え方に対して、次のような疑問が生じます。
- 物質的世界は本当に存在しないのか?
私たちは日常生活で物質に触れたり、目で見たりしています。唯識思想ではこれらの物質は実際には心の働きによって生じた「現象」に過ぎないとされますが、この点については多くの哲学者が議論を重ねています。
2. 認識の正確性の問題
もしすべての現象が心の作用に過ぎないとすれば、私たちの認識はどの程度正確なのか? という問題もあります。唯識思想では、人間の認識がしばしば錯覚や誤解を含んでいると説きますが、どのようにして「正しい認識」と「誤った認識」を区別すべきかが問われます。
3. 個人的な心と普遍的な現象の関係
唯識では、各個人の心が世界を作り出すとされますが、他者の心との関係はどうなるのか? という疑問があります。例えば、ある人が感じる現実と別の人が感じる現実が異なるとすれば、なぜ我々は似たような世界を共有しているように感じるのか、という問題です。これに対しては、阿頼耶識(あらいやしき)という普遍的な潜在意識が全ての存在をつなぐという解釈が提案されています。
4. 悟りと心の問題
唯識思想は、心の働きを理解することが悟りへの道であると説きます。しかし、心そのものが悟りに達する際にどのように変化するのか? という問題があります。すべてが心の作用であるならば、悟りとは心の中のどの部分を超越することなのかという点が重要な問いとして浮かび上がります。
5. 唯識問題のリスト
- 物質世界の存在について
- 認識の正確性と錯覚の区別
- 個々の心と他者との関係
- 悟りにおける心の役割
これらの問いは、唯識思想を深く理解するために避けては通れない問題です。それぞれの問題に対する解釈や解決方法は、唯識学派内でも議論の余地があり、様々な仏教経典や論書において詳しく扱われています。
おすすめの書籍|初心者から深く学びたい人向けの必読書
唯識思想を深く学びたい方にとって、信頼できる本や資料を選ぶことは非常に重要です。ここでは、初心者から中級者、さらには研究者に向けたおすすめの書籍をリストアップしました。それぞれが異なる視点やアプローチで唯識論を解説しているため、自分の学びたい内容に合わせて選ぶと良いでしょう。
1. 『唯識三十頌(ゆいしきさんじゅうじゅ)』
原作者:無著(むじゃく)
こちらは唯識思想の基本的なテキストであり、30の短い詩文に唯識の核心が凝縮されています。仏教の中でも基礎的なテキストとして位置づけられ、後世の唯識論者たちが解釈を重ねています。翻訳や解説付きのものも多く出版されており、初学者にも親しみやすいです。
2. 『唯識二十論(ゆいしきにじゅうろん)』
原作者:世親(せしん)
こちらは無著の弟である世親による著作で、唯識思想の重要な文献の一つです。唯識の理論が具体的にどう実践に応用されるかが記されており、唯識をより実生活に結びつけて理解したい方におすすめです。
3. 『唯識思想入門』 著者:鎌田茂雄
現代の唯識論を理解するための、初心者向けに書かれた解説書です。難解な哲学的概念も、現代の視点からわかりやすく説明されているため、唯識を初めて学ぶ人に最適です。具体的な例や現代的な言葉で解説されているので、仏教初心者にも分かりやすいです。
4. 『唯識の世界』 著者:田村芳朗
田村芳朗氏の著書は、歴史的・思想的背景を交えた唯識の解説が特徴です。唯識思想が仏教全体の流れの中でどのように位置づけられているか、他の仏教思想との関連も詳しく述べられており、唯識を広い視野で学びたい人におすすめです。
5. 『唯識入門』 著者:福永光司
福永氏は、唯識思想を初心者に向けてわかりやすく説明しています。体系的に唯識の教えを学びたい方におすすめで、文献的なアプローチも含まれているため、専門的な視点で学ぶ際にも役立つ一冊です。
6. 『仏教思想のゼロポイント: 唯識』 著者:長谷部亮
現代仏教学の学術的な解説を含む本書は、唯識を現代的に解釈するための入門書として定評があります。最新の学術研究も取り入れており、唯識をより深く掘り下げたい方に向けた一冊です。
これらの書籍を参考に、自分に合ったペースで唯識を学んでいくことが大切です。唯識思想は難解な部分もありますが、これらの書籍を活用することで理解を深めることができるでしょう。
まとめ : 唯識思想をわかりやすく理解するための入門ガイド 仏教の心の働き!!
![まとめ : 唯識思想をわかりやすく理解するための入門ガイド 仏教の心の働き!!](https://www.akinaiginza.com/wp-content/uploads/2024/09/yuisiki_wakariyasuku_06.jpg)
- 唯識思想はインドの仏教哲学者無著と世親によって確立された
- 唯識思想の根本は「すべての現象は心の働きによる」という考え方
- 世親が「唯識三十頌」で唯識の要点を簡潔にまとめた
- 唯識思想は中国や日本にも伝わり、現在も仏教哲学の基盤となっている
- 唯識思想の中心人物は無著、世親、陳那、玄奘など
- 万法唯識は、すべての現象が心の働きによって現れることを示す
- 唯識思想では、物質的な現実は実在しないと説かれる
- 唯識思想は「八識説」で心が8つの識に分かれると考える
- 阿頼耶識は心の深層で、過去の行いの結果を蓄積し、未来に影響を与える
- 空の思想との違いは、唯識思想が心の働きを強調している点にある
- 唯識思想では、外界の存在は心の認識によってのみ成り立つとされる
- 仏教における唯識は、心の働きがすべての現象を作り出しているという考え
- 唯識思想は、正しい認識を得ることで迷いから解脱できると説く
- 唯識思想と浄土真宗は、心の浄化を目指す点で共通しているが、アプローチは異なる
- 唯識問題とは、心がすべてを作り出すとする唯識思想の哲学的な課題